全ての正社員エンジニアに言えることではないですが、日本の社会では「正社員」こそがブラックの原因になっていることもあります。
特に新人や若手が被りやすいのが「何でもかんでも仕事を振られる」ことや仕事が「断れない」などブラック化した際の実態も様々です。
また、エンジニアだけが正社員でブラックになるのではなく他の職種にも同じことが言えるかもしれません。
エンジニアは特に専門性の高い仕事なので知らない技術の仕事を振られてしまってもトラブルになりがちです。
エンジニア特有なのは「専門知識」があるからこそブラックになりがちなのです。
他のプロジェクトが炎上して支援に行かされた挙句、自分の専門とは異なる仕事を強要されるなどもあります。
知識のない仕事を強要されて苦し紛れにこなしていても、新たなトラブルが生まれたり精神的な消耗が発生します。
専門知識と言うのは時には「諸刃の剣」にもなります。
しかしこういったブラックな働き方になりやすいのは正社員であるのが理由だと思う場面も多いです。
正社員、いわゆるプロパー社員だからと言ってすべてにおいて優位ではないということです。
では実際にその理由を紹介したいと思います。
正社員エンジニアがブラックになりやすい理由
職務内容が明確に定義されていない
派遣や業務委託の場合は、職務内容を可能な限り詳細に、そして明確にします。
請負契約の場合は、会社で特定の業務の詳細関係なく受注するため、通常の正社員と同等の働き方と考えて良いです。
実は仕事においては派遣社員や業務委託の方が内容においては守られています。
派遣契約であれば派遣契約書に明記した職務内容以外の仕事を命令するのは違法行為です。
派遣契約の派遣社員には明示した職務内容以外の仕事を強制するとコンプライアンス違反となります。
また業務委託契約の場合も、発注者側は直接の指揮命令権はありません。
つまり、個人的な依頼や業務委託範囲外の業務の命令などは違反行為となります。
しかし正社員の業務は求人などでは明記しきれていないです。
当然、詳細な業務内容の全てを記載することは難しいです。
求職者側もあまりに膨大な職務内容だと応募するのに気が引けてしまうかもしれません。
こういった背景から正社員は明記された職務以外の仕事を、入社後に知る事が多く想定外の業務に直面しやすいです。
正社員同士の断りにくさ
正社員というのは確かに安定した働き方です。
謙虚に振る舞い、自分のやるべき仕事をきちんとこなしていれば給料が保証されます。
しかし、その反面多くの我慢や理不尽に耐える力が必要になります。
正社員同士の依頼などは非常に断りにくい事が多いです。
派遣・業務委託は法律や契約によって守られているので、職務範囲外の仕事について真正面から断る事が出来ます。
依頼側も、そういった契約面でも揉め事を避けたいためお願いすることも出来ません。
そうするとプロパー社員の中で様々な依頼ややり取りが発生します。
そこに上司や先輩など社内での立場が上である人からの依頼となると断りにくい事が多いです。
断りを入れた時に「強要」されるのが所謂パワハラにあたります。
つまり、正社員の方が圧倒的に「パワハラ」や「モラハラ」などのハラスメント行為を受けやすいのです。
ブラックに直結してしまうのは、「会社員としての立場」が利用される場面の多い正社員であるのです。
一度正社員になると退職のしにくさから仕事を断り切れずに自分に負担をかけてしまいがちです。
最終的に心身を消耗し休職してしまう人もいます。
また懲戒処分の条項には「理由なく異動を拒否した場合」などの条件があるため、突然の異動や望まない異動も受け入れなければいけない風潮が非常に強いです。
置き去りの仕組み
正社員として入社して、業務に従事した時に最もトラブルや精神的な苦痛になりやすいのが「置き去りにされたシステム」です。
システムやプログラムを作った人が既に退職していたり、誰も対応できないまま放置されていたものを、新しく来た人や後任の人が対応せざる負えない時です。
設計書やドキュメント、コメントがあればまだ良いですがそういった情報もなく一から全て確認しないといけないのは大きな負荷になります。
そしてそのような「負の遺産」を何とか片づけなければいけない状況になるとブラックになりがちです。
この点は、エンジニア特有の問題です。
例えば、インフラエンジニアとして従事している時に、過去の担当者が「Java」でバッチを組んでいた場合、バッチでトラブルがあるとインフラエンジニアであるにもかかわらず「プログラム」を読まないといけなくなります。
外注したプログラムではない場合、他にJavaを読み書きできる人を探すか自分で対応するしかなく逃げ道を失います。
知識のない技術に関して緊急の対応を迫られるとブラックな働き方でしか対応が出来ません。
派遣社員や業務委託社員は、契約書に明記されていない業務は断れます。
しかし正社員のエンジニアは断る事が出来ません。
例えパワハラになろうと、会社の業務を優先して押し付けられてしまう事が多いと思います。
個人の意思より会社を優先
会社員において大きな問題だと感じるのは、社員一人ひとりの幸福よりも会社としての立場や利益を優先してしまう姿勢です。
もちろん、会社として利益を伸ばして会社をもっと良くしていこうとするのは当然です。
ではなぜ会社の立場や利益を優先してしまうのが問題だと感じるのでしょうか。
大切にすべきは「個人の幸福」と「会社の利益」の両方であってどちらかを優先するべきではないと思うからです。
個人の意思だけを尊重して会社が赤字になってしまえば元も子もありません。
また会社の利益を過剰に求めるがあまり、社員が苦しむような働き方を強いていては人の出入りが激しいブラック企業となってしまいます。
つまり、バランスこそが大事なのです。
しかし未だにIT業界の一部ではプロジェクトを終わらせるために「無理な働き方」を強いています。
プロジェクトで債務不履行となると、様々な問題が発生するため個人の生活を犠牲にしてでも案件を終息させようとします。
そういった場面に巻き込まれると、派遣・業務委託は契約そのものを終了することが最終手段として残っていますが、正社員は「退職」「職務放棄」しかありません。
つまり、何かを犠牲にしなければいけない立場だと言えます。
また契約に守られている人たちも契約の終了に対して圧力がかかっても法的に優位であれば法的措置も可能です。
しかし正社員は「職務放棄」で懲戒処分を受けてしまったり、「退職」を認めてもらえないなどトラブルに発展します。
正社員は逃げ道が非常に険しい立場であるとも言えます。
最期に
エンジニアが正社員で働くとブラックになりがちな理由を紹介しました。
今ではかなりホワイトな環境が増えていて、ブラック企業に該当するような会社も年々減っています。
しかし、ブラックな働き方だけではなく他にもたくさんの問題や課題も残っています。
正社員の立場を利用した仕事の押しつけ、価値観の押しつけは非常に問題です。
パワハラの法制化が進んでいるので、近い将来はパワハラによる刑罰対象者が出てくるかもしれません。
技術者特有のブラックになる理由もあれば、他の仕事にも言える理由もあると思います。
正社員エンジニアが辛いと感じる人はいっそ独立してしまって良いと思います。