情報システム部門で仕事をしているとどうしても接する機会や検討などしなければいけないのがシンクライアントです。
規模の大きな会社では、シンクライアントが無いという会社は少ないのではないでしょうか。
数台であってもシンクライアントを利用している会社も多いかと思います。
そもそもシンクライアントとは何かと言うとパソコンには最低限の機能だけを持たせて遠隔のPCを利用する仕組みです。
詳細な定義は割愛しますが、画面転送という技術を用いて、手元のPCへ別の環境から画面を表示してパソコンを利用する仕組みです。
開発元の企業としてはCitrix社の製品が有名です。
遠隔のパソコンの画面を転送して業務などを行うので、パソコンが盗まれてしまっても遠隔アクセスのみ禁止にすることで情報漏えいを防ぐことが可能です。
セキュリティについては後程記載していきます。
そこで今回、シンクライアントを利用した経験からそのメリット・デメリットを書いていきたいと思います。
個人的な価値観ですので、参考にして頂ければと思います。
シンクライアントのメリット2つ
どこからでも仕事が出来る
前述したように、パソコンにはシンクライアントとして使用できる機能のみを持たせることでどんなデバイスからでもアクセスする事が出来ます。
自宅のPCにもアクセスするためのアプリや環境を整えれば簡単に仕事の環境に接続する事が可能です。
つまり、休日などにトラブルが発生しても会社に行かなくても対応が可能になります。
また、休日出勤などについても会社からではなく自宅から仕事をすることも出来るので、移動と言う無駄な時間を効率化出来ます。
また、外出時にノートパソコンを持っていればWifiやテザリングなどでも接続が出来るので、働き方改革で登場しやすいです。
もちろん、この場合はいつでも仕事が出来てしまうという事で情報システム部門や人事部門は適切な管理体制を整える必要があります。
しかし、きちんとしたルールがあれば働きやすい環境を作る事が出来ます。
もし在宅ワークや移動の多い職種の方が多い会社であれば導入したり、導入を考えてみても良いかもしれません。
情報漏えいの防止
冒頭で少しセキュリティについて書きましたが、シンクライアントのメリットはセキュリティにあります。
画面転送の仕組みでは、リモート上のパソコンのデータをローカルに保存できないようにしています。
つまり、パソコンを紛失してもしなくてもデータを奪われることはありません。
だからと行って不要に持ち運ぶ必要はないですが、データの入ったパソコンを紛失した際の対応というのは大問題として捉えれます。
始末書などもあり得るほどのインパクトです。
シンクライアントにすることで前提条件として絶対に漏えいしないのはセキュリティとしては完璧です。
なので営業職など移動も多く重要な情報を抱えやすい職種のリスク軽減対策としては十分対応できるでしょう。
シンクライアントを利用する事で会社のネットワーク内だけでデータを持ち運ぶので漏えいリスクは格段に低くなっていく事でしょう。
シンクライアントのデメリット
性能が追いつかない
デメリットの一つとして、シンクライアントはリモート上のパソコンを利用するのですが、そのスペックをコントロールするのが難しいです。
例えば、メモリが16GBのパソコンを持っていても接続先の環境がメモリ8GBであればローカルのパソコンを利用した方がよっぽど性能が良いです。
もちろんリモート上のパソコンも増強は出来ますがシステムの環境に依存します。
リモートの上のパソコンは仮想化という仕組みで物理的な環境ではない環境で構築されています。
例えば、メモリが120GBあるサーバに40台のリモート用パソコンがある場合、1台に割り当てられるメモリは3GBしかありません。(あくまで例です)
これを増強するには、本体であるサーバのメモリを拡張する必要がありますが、メモリの拡張には様々な作業が発生します。
新しいメモリの購入手続きや作業日の調整が必要です。
また、全てのリモートパソコンを増強する事になると、そもそも古いシステムでは対応できるスペックではない事(拡張できるメモリ量が少ない)もあります。
ここ数年はハードウェアの性能が上がり、メモリ8GBのパソコンも一般的です。
メモリ4GBのパソコンでリモート環境に接続してメモリ16GBのパソコンが使えればシンクライアントとして理想的です。
つまり、時代に置いていかれたスペックのリモート環境では普通にパソコンを使う方がよっぽど使いやすく便利です。
ただし、時代と共に進むにはシステムエンジニアが常に対応していく必要があります。
情報システム部門としては、シンクライアント端末が増えれば増えるほど仕事が増える事と同義です。
トラブルが増える可能性がある
そもそも、シンクライアントを導入する事でデバイスは1台ですがOSの環境は2つ存在する事になります。
リモート上のパソコンであってもトラブルは発生しますし、手元のパソコンでもトラブルが起こりえます。
つまり社員1人に対して2つの環境を提供する事になります。
情報システム部門では問い合わせが増える原因にもなります。
社内ルールで両方の環境で使い方も利用できるアプリケーションやサービスも異なります。
前述した通り、セキュリティ対策としては素晴らしいのですが、データのやりとりが出来ない事で発生する問題もあります。
例えば、インターネットや社内LANのない環境で操作する時などです。
接続できる環境が無ければ、シンクライアントとしては全く機能しないので何も出来なくなってしまいます。
そして、リモート上の環境からデータを移すことも出来ないのでマニュアルなども配置できません。
インターネットに障害があったとき、ローカルのパソコンであればデータは残りますがシンクライアントを使用していた場合はその時点でリモートアクセスが切断されます。
また、回線のトラブルを直接受けやすいので画面転送が不安定であったり、動作が遅くなったり接続する環境に依存して利便性が大きく変わります。
シンクライアントはメリットが注目されがちですが、適切な環境でないと本来の力が出ない事を認識しましょう。
最後に
シンクライアントについて書いていきました。
個人的には、これまで書いた内容が私の感じるすべてです。
正直な所、私はあまりシンクライアントが好きではありません。
リモートアクセスするのでれば、VPN機能で十分だと思っていますし、やはりインターネット回線やリモート上の環境のスペックが悪いと全く使い物にならないので。
データの漏えい対策については、シンクライアントを使用しない場合ハードディスクに対する暗号化やデータ消去の仕組みについて十分検討して決めていく必要がるので、それはそれで注意です。